サービス精神

カルチェ・ラタン (集英社文庫)

カルチェ・ラタン (集英社文庫)

たぶんイギリスいくより前に買って積んであったもの。読むものがなくなったので手にとってみた。佐藤賢一の本って、なぜか買ってから実際に読み始めるまで長くかかる。文字がいっぱいだし私の苦手なカタカナ人名(しかも馴染みの薄いフランス系)ばかりなのでついつい後回しにしがちなのかなあと思うのだが、でも実際読み始めると面白いし一気読みである。自分の心理って難しい。よくわからん。
で、この本は仕掛け(元本としてフランス語版の回想録が存在し、それを日本人作家『佐藤賢一』が訳したという枠)がまず面白いと思う。そして高校では世界史を選択しなかったためお恥ずかしい程度の素養しかない私でも名前を知っている西欧史の登場人物が目白押しなのもサービス満点。そう、佐藤賢一は「王妃の離婚」とかでも思ったのだが、サービス精神が旺盛である。読者を楽しませようという心意気を感じられる作家だと思う。日本人なら小学生でも知っているフランシスコ・ザビエルからノートルダムの鐘撞き男までこれでもかというくらい有名人の絨毯爆撃が繰り広げられている。内容も冒険活劇を軸に探偵小説風味や青春小説風味、教養書的な一面も取り入れながらロマンスも絡めて挙げ句の果てはエログロ的な場面もちらほらとレンジが広い。うーんサービスてんこ盛りである。
しかし、正直言って私にはサービスが若干濃厚でちょっと消化不良気味です。面白くは読めるんだけどなー。この「カルチェ・ラタン」を読み終えたところで、埃をかぶっている佐藤賢一の文庫本が実はもう一冊あったりする。でもすぐ続けて読むとお腹がもたれそうなのでまたしばらく積んどきます。読めば面白く読めるってわかってるんだけどなー。うーん何だろうこの消化不良感。気になる。