洗濯機を取り付ける

しかし、ここはひとつ冷静に考えよう。
電気屋から「すまなかった、こちらの手違いで取り付けも含まれていたのに手配ミスであった」と素早くサービスマンが現れて取り付けを行ってくれるという公算はほぼゼロだと思われる。ただでさえ日本に比べるとサービスが悪いと評判である。これだけはっきり取り付けはないと言われたのに、それがひっくり返り、しかも素早く対応されるなど、これまでの経過から期待できない。(思い出してみよう、そもそもこの洗濯機は先週のうちに届くはずだったのだ)すると、考えたくはないけど、最悪このまま1週間くらいこの動かない洗濯機とともに取り付けを待つことになりかねないような気がする……。
私はすっくと立ち上がった。夫に電話する。「かくかくしかじかで電気屋は帰ってしまったんだが、とりあえず私が取り付けをやってみる」
そんなたいしたことであるはずがないのである。日本だったら夫が自分でやっているんだが、何しろビルトインになっていて面倒なのと、説明が全部英語だってところがミソなのだ。娘は何やら新しい物体に興味津々だが、私に邪見に追い払われてその辺で様子をうかがいつつうろうろうろうろしている。よし、やるぞ!
まず、電気屋が「ここに書いてあるように」と指した、洗濯機の上にペラッと1枚はってある説明書を見る。ふむふむ……って、これ取付説明書じゃなくて、背面のホースとかの固定の取り外し方法だけじゃん。もう、いいかげんなこと言いやがって。でもとりあえずこれもしなきゃいけないので、説明の手順を進めていく。途中、退屈した娘が洗濯物干しにまとわりついて手を挟まれ大泣き(痕が残った、これは痛そうだ)などというアクシデントを挟みつつ、順調に終了。なんでこんな大仰なことになっていなければならなかったのか理解に苦しむが、とりあえず取り付け前段階までこぎ着けた。
いよいよマニュアル本体を見つつ、取り付けに入る。本体から出ているホースがそんなに長くないので、取り付け場所にできるだけ近づけてから作業をしなければホースが届かない。めちゃめちゃ重い洗濯機をずりずりと移動していたら……いたたたたたたたたあああああああ!!! 足の指に載せちまったよおおううう。しばらく足を抱えてうずくまる。さすがに娘が心配そうにやってくるが、お、おかまいなく。あんたじゃ役に立たないしな。そうかー、安全のための靴って、静電靴じゃなくてこっちだったのね、と身をもって思い知る。くううう。
気を取り直して、狭苦しいシンク下に給水ホースと排水ホースと電源コードをなんとか引き入れ、それぞれをつなぐ作業を行う。娘はだいぶ退屈し、お腹もすいてきたらしく、「まんま」「だ!(抱っこの意)」などキーワードを発しながら危なそうなものをさわろうとしては私に怒られつつまわりをうろついているのだが、こんなん途中でやめたらわけわかんなくなるので到底かまっていられない。なんとか一応取り付けができたところで、そのまま試運転。おおお、動くじゃないの。水漏れと、水のところに間違ってお湯を供給していないかが心配なので、そのまま張り付いて見守る。排水のときに最初水が少し回りに飛んでいたが、それは長さが足りなかったためらしく、洗濯機をさらに移動して充分差し込んだら解決した。
さて、あとはこれをもとの場所に押し込むだけであるが……入らない。ただでさえギリギリいっぱいの横幅なのに、このめちゃめちゃ重くて手がかりのない四角い箱をどうやって動かしたらいいのさ。到底いますぐどうこうするのは無理なので、やっと娘と昼食にする。
昼食後、娘が寝付いたところでもう一度洗濯機の押し込みにチャレンジ。ちょびっとずつ押し込んでいくも、半分入れたところでもう私には限界。もういいや、今日はだいぶ頑張ったしな、私。あああああ疲れましたあ。
午後、家主教授からお電話をいただく。あちこち電話して水道屋の手配をして下さったらしいのだが、取り付けができたことをお伝えする。ただ、移動できないという問題が残っているので、こちらは夫と協議の上改めてご連絡するということにする。家主教授は純正イギリス人なのだが、電話で喋っている分には日本人としか思えませんでした。こういう時は、本当に日本語でのコミュニケーションができてよかったなあと思う。とても上記の内容を英語で伝える技量も気力も今の私には全然ありませんよ。しかも電話で。絶望的だね。
とにかく洗濯機は使えるようになったので、2週間ぶりに洗濯機で洗濯しました! あーさっぱり。一応まだ続く。